キャリア

公開日:2022/08/04 更新日:2023/01/10

スタートアップ転職の時代はもう終わり!?有望スタートアップ企業の見つけ方とは

スタートアップ企業への転職に興味はあるものの、市場の状態やどのように今後成長していきそうな企業を見つけたら良いのか疑問や不安を持ってしまい、なかなか一歩を踏み出せない人もいるでしょう。スタートアップ企業とは、創業から数年の若い会社であり、比較的新しい事業に挑戦している成長中の会社のことを指します。その中でも、創業から10年以内で時価総額が10億ドル、日本円にすると約1,300億円(8月1日時点のレートを参考に1ドル130円にて試算)を超える企業になると「ユニコーン企業」と呼ばれるようになります。日本企業の中では、ニュースアプリ事業を運営する「スマートニュース株式会社」や、人事労務ソフトの提供を行う「株式会社SmartHR」などがユニコーン企業として有名です。

今回は、多くの求職者のベンチャー企業・スタートアップ企業への転職支援を続けてこられた高野秀敏さん(株式会社キープレイヤーズ 代表取締役)に、近年のスタートアップ企業の市場を踏まえて、有望なスタートアップ企業の見つけ方や選考の進め方などアドバイスいただきました。

以下、文・高野秀敏

最近のスタートアップのマーケット、本当に終わったのか?

昨年から日本でも世界でもグロース株の株価は急落しました。3分の1くらいになった会社も多いです。中には6分の1などという会社も珍しくありません。そんな中で「スタートアップへの転職の時代は終わったのではないか」という声もチラホラ聞こえてきます。確かに超大量採用をするというスタートアップ企業は減りました。

しかし、年間7,000億、8,000億とも言えるベンチャー投資の資金はVC(ベンチャーキャピタル)やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)にあります。ファンドである以上きちんと投資していかなければなりません。従ってまだまだスタートアップ企業の求人はあります。投資を受けたもののうち、約半分くらいの金額は採用費用と人件費に当てられるからです。スタートアップでは毎年2000社くらいの新規資金調達が行われています。そして、全く資金調達はせずとも上場する会社も毎年一定以上います。株価としては今はダウンラウンドと言われる、前に資金調達をした株価よりも低い株価で調達をせざるをえないという会社も増えてきています。ただし、それでも調達ができている会社や、全く関係なく売り上げが伸びている、利益も伸びているという会社も実は多数あります。そのため、スタートアップのマーケット全体としてはシュリンクしているとも言えるかもしれませんが、必ずしもスタートアップへの転職の時代が終わったかというとそうではありません。 売上・利益を着実に伸ばしているいわゆる「有望」なスタートアップ企業を転職先としてきちんと選ぶことができれば、自分も会社も成長していける環境で働くことができるのです。 では、具体的にどうやって有望なスタートアップを見つければ良いのか次の章にて解説します。

どうやって有望スタートアップを見つけるのか?

新規で資金調達をしているスタートアップだけでも年間2000社もあります。ではどうやって見つければ良いのでしょうか。

実は調達をしている会社を見つけるのは簡単です。Googleで「資金調達」と検索窓にうち「ニュース」のところをクリックします。 そうすると、主にPRTIMESなどの資金調達のニュースが出てきます。これを見るだけです。なお、私はこのマニアックな作業を毎週やっていて、YouTubeライブ配信で日曜日23時から、今週の上場承認と資金調達についてライブ配信しています。翌日にはアーカイブもアップロードしているので、楽をしたければそちらを見てもらえれば1週間の企業の資金調達状況はわかります。さらに、マニアックな解説はオンラインサロンで話をしたりしています。表面的な情報は実はネットで検索をすれば出てくるのです。この方法は、案外知らない人が多いです。

参考

YouTubeチャンネル 高野秀敏のベンチャー転職ch

どうやって求人を見つけるのか?

実は正式な求人票というのはなくても良いのです。 資金調達のニュースから興味がある企業があれば直接問い合わせてしまって問題ありません。 また、その企業の経営者がTwitterやFacebookをやっている場合であれば、直接連絡しても良いです。会社のHPから採用ページがあればそこから問い合わせるのが正式なルートではありますが、SNSのDM等のほうがクイックに反応してくれることも多いです。

もちろん求人媒体で見つけるという手法もあります。Green、ビズリーチ、Wantedlyなどおなじみの求人サイトをはじめ、最近はYOUTRUST、Meetyなどといった媒体もあります。さらには、企業との面談を行うとお金がもらえる厳選求人だけを集めたPayCareerというマッチングサービスも出てきています。また、このPayCareerは私が関与しているサービスなので、ちょっとしたポジショントークになりますが、市場価値の高い人が求人媒体に登録すると100通、200通を超えるスカウトが飛んできます。とてもすべての企業に会っていられない状況になります。間違ったスカウトやスカウト代行により質の低いスカウトを受けたことがある人もいるでしょう。そんな求職者にとっての無駄な時間をはぶき、本気のスカウトを受け取り、お金ももらえるという仕組みを追求しているのが、このような面談課金の媒体です。何せ転職には時間やお金が本来かかるものですから。なので、自信のある方は面談課金の採用媒体を使う人も増えてきています。

なお、詳しいスタートアップ求人の探し方は私が代表を務める株式会社キープレイヤーズのサイト内でもまとめていますので、参考にしてみてください。

どうやって内定をとるのか

最近は 「カジュアル面談」 というものが流行っています。まずは「面接ではなくて面談をしましょう」というものです。ただ、この表現に騙されないでください。「カジュアル面談」というのは、企業が優秀な人に会えないので仕方なく会うためにそう言っているだけです。ビジネスの場ですので結局会ってしまったら、この人はウチで欲しいか欲しくないかその場で判断しています。面接と伝えているわけではないので、断る際は「ちょうど良いポジションがなかった」などと後で回答します。もちろん企業側は求職者の人を騙そうと思って「カジュアル面談」という表現にしているわけではありませんし、嘘をついているわけでもありません。実際に会った上で「ウチとは合わない」と思ったわけですので。つまり、ほとんどの企業が今実施しているカジュアル面談というカジュアルさに騙されないことが大切です。

必要な準備は通常の面接と変わりません。企業のHPをみる。決算を見る。面接官がわかればエゴサーチして、相手の学校、出身地、年齢、SNSアカウント、職歴などを見てどんな人なのかを想定する。アイスブレイクできそうなネタを考えておく。その会社のライバル会社を調べて違いを見出す。その業界の最大手や2番手の会社を調べて違いを探しておくなど選考時に必要な準備を怠らないことが大切です。さらに一番大切なのは 「自分は何が貢献できるのか」ということを言語化しておく ことです。これを事前準備の時に考えながら面談の時に話しましょう。考えても何が貢献できるのかわからなかったら面談にいってもあまり効果は得られないかもしれないので、別の企業も視野に入れても良いかもしれません。

スタートアップ転職に向いている人・向いていない人

「自分はスタートアップに向いてますか?」こんな質問も受けます。スタートアップと言っても実はそれぞれの会社は全然違います。社長、ビジネスモデル、売上、利益、社風、全くと言っていいほど違うので、よくTwitterなどで見る「大企業はこう、スタートアップはこう」というのはほとんど参考にならないことが多いです。大企業と言っても本当に一社一社全然違うと感じるからです。

例えばスタートアップ界隈の人がよくいう、「『看板』のあるところで働いている営業の人はスタートアップだときつい」という話がありますが、普通のスタートアップより野村證券の人のほうがかなり数字は追いますし、結果を出す人が多いです。ただこれももちろん人によります。そのため、こんな人なら向いている、向いていないというのももはやないのではないかと思います。「自分は慎重なタイプで、スタートアップ向きではない」みたいな人も、スタートアップ企業の管理部門についてはもちろん慎重なタイプでなければ務まらないわけですので。また、「たまたま知人がスタートアップに転職したが、活躍せずにやめてしまった」などといった知人の経験談も話半分に聞いていたら良いかと思います。もちろん参考になるところはありますが、それも一つの事例に過ぎないということです。大事なことは、 自分が活躍できると選考を通して感じられるか、周辺情報を集めてそうだと言えるのか。そして決断した以上は結果を出すまでやりきれるのか ということが大事です。